飛び入学の大学生はなぜリスクがあるの?
もともと大学への飛び入学は、ある分野において「類まれなる才能」を認められ、一刻も早く大学教育を受けさせなければ、その才能が損なわれてしまうような「ごく少数の者」を対象として構想され、入学後の教育内容も手厚いなどの事情も手伝って、「中退」といった事態が想定されていませんでした。
しかし、現行の制度では、飛び入学によって大学に入学した者は高校を卒業することなく進学することになるため、大学を中退してしまった場合、最終学歴が「中卒」になってしまうという問題点を抱えていました。
これが、飛び入学によって大学に進学した人のリスクになると考えられているのが現状です。
飛び入学の問題点
現在、大学への進学で飛び入学を利用する人は「ごく少数」の「例外」にとどまっています。制度を導入しているのに、実際は広がりをみせていないということです。
これには、さまざまな理由があると考えられますが、なかでも
- 「学歴の問題」
- 「エリート教育への理解」
などの理由が大きいのではないかと言われています。
「学歴の問題」は、前項でも述べたように、中退時の最終学歴が「中卒」になることへのリスクです。もうひとつ「エリート教育への理解」については、世間といった観点から飛び入学の抱える問題点を考えなくてはいけません。
つまり、スポーツ・芸術など一部の分野を除いては、飛び入学という選択肢は、まだまだ本人やその保護者に「皆と違う道を歩むリスク」があり、
- そのリスクを世間がどれだけ認めてくれるのか
- その生き方を社会的に否定されはしないか
というところで不安に思うことがある、ということではないでしょうか。
ほかにも、教育関係者からは「人格形成」という観点からも、飛び入学には問題があるとされているようです。
学校は学力だけではなく、人間性を養うところでもあるという考えから、飛び入学のように、高校生活の一部を飛ばして大学へ進学することに疑問符が投げかけられているという一面もあるのです。
高卒認定試験との関連
そこで今回のニュースです。飛び入学の抱える「中退後の学歴」という問題を解決するひとつの策として、現在実施されている高卒認定試験の制度を利用してみてはどうか、というものです。
つまり、飛び入学で大学に進学したその時点では、高卒資格をもたない人であっても、高校で修得した単位と進学後に大学にて修得した単位を合わせることで「高等学校卒業と同等」であることを「認定」し、これまで抱えていた中退時のリスクを回避できないかということですね。
現状の高卒認定試験は、合格のために決められた科目を受験して、全科目合格することができれば「認定」という形式ですので、このあたりは、現状の高卒認定試験とは違う認定方法ではありますが、
- 進学の際に、高校卒業と同等の扱いとなる
- 資格取得の際に、高校卒業と同等の扱いとなる
- 就職の際に、高校卒業と同等の扱いとなる
- 学歴としては高校卒業にはならない
といったような制度面での内容は、現状の高卒認定となんの違いもないようです。高卒認定の制度が導入されることで、飛び入学を実施する大学が増えることが望まれるのではないでしょうか。
まとめ~高卒認定はどう変わっていくのか
飛び入学は「類まれなる才能をもつ生徒」を「国際的に活躍できる人材」として育成しようという目的があります。スキージャンプの高梨沙羅さんがまさにそうで、飛び入学で話題になりましたし、その際、高卒認定も取得されています。
もし仮に、今回のニュースのようなかたちで、高卒認定の制度が利用されることとなり、飛び入学もより促進されたとして、「高卒認定の制度があったから」金メダルをとれた、とか、ノーベル賞をとれたといったように、飛び入学の本来の目的が実現されていく事例が増していくことになるかもしれません。
このように、今後高卒認定は、現状の8月と11月の試験での認定方法以外にも、様々なかたちで認定されていく方向性に変化していくのではないでしょうか。
要は、その時代にふさわしい人材を育てるために、年2回の試験に縛られることなく、必要に応じて、認定方法は変わっていくのではないかと思います。
今回の飛び入学の問題解決の提言の場合は、「国際社会で活躍する人材育成」という目的のため、高卒認定の制度が「認定方法」という部分を変更して使われることになるかもしれないのです。
そうして、高卒認定を活用して、学問、スポーツ、芸術、ビジネスなど、様々な舞台で国際的に活躍する人材を育成することが、高卒認定のこれからの変化であり、新しい価値となっていくのではないでしょうか。